入園時の面談

日本語ができない保護者の場合、入園時の面談には通訳をつける必要があります。保護者の家族や知り合い、同じ国出身の人、地域の国際交流団体の支援員などの協力が得られるかどうか確認してください。ただし、家庭の事情を同国人にはあまり知られたくないという保護者や、親切心から質問以上のやりとりを進めてしまう通訳者もいますので、通訳を選ぶときには注意が必要です。

日常のコミュニケーション

まずは日常のあいさつから始めましょう。日本語ができない保護者には、その保護者が日常使う言語であいさつすると喜ばれますし、先生方の受け入れの気持ちが伝わるでしょう。

各国語のあいさつ「山形県外国人児童生徒受け入れハンドブック」より

そして、子どもの様子を伝えるときには、短い文で、ゆっくりはっきり話します(ただし、ある程度、日本語ができる人に対して、過度にゆっくりはっきり話すと、相手は馬鹿にされたと感じることがあるので注意が必要です)。また、文の終わりを「~かな…」のようにあいまいにしないで、「~です」「~ました」のようにはっきりと言い切りましょう。

敬語はほとんど必要ありません。「です」「ます」で十分です。家庭に日本人がいない場合は、方言を知らないこともあるので使わない方がいいでしょう。相手の様子を見て、わかっていないようだったら、簡単な言葉にしたり別の言葉で言い換えたりしてください。

あいまいな言い方、遠回しな言い方は、誤解を招くこともあります。保護者にお願いしたい場合は「~してください」、許可できない場合は「~できません」「~しないでください」など、日本人同士では「きつい」と感じるはっきりした言い方の方が、意味が正確に伝わります。


「(子ども)は、もっとご飯が食べたいようです」→「お弁当のご飯を増やしてください」
「出欠表が見当たらないのですが…」→「出欠表はもう出しましたか?」

持ち物や行事について伝えるときには、実物を見せる、絵を描いて示す、ジェスチャーをつけるなど、言葉以外の方法も活用しましょう。

その保護者がどのぐらい日本語ができるのかを観察し、適切で効果的な伝え方をしてください。

お便り

日本語を話すことができても、読み書きが得意ではないという人は大勢います。保護者によっては、お便りの内容が伝わっているかどうか確認した方がよいことがあります。また、お便りの大切な言葉にふりがなをつけたり、漢字を使わない国の人のためにひらがなやローマ字で書いたりする、読んでほしい部分に下線を引くなどの配慮があれば、大きな助けとなります。

連絡帳

上で説明したお便りに関する配慮は、先生方が連絡帳を書く場合も同様に必要です。中国や台湾出身の保護者には、漢字で書くことでわかることもありますが、「手紙」(中国語では「トイレットペーパー」の意味)や「先生」(中国語では「~さん」の意味)、「野菜」(中国語では山菜など野生の食用植物の意味)のように、違う意味を持つ言葉もあるので、注意が必要です。

外国出身の保護者に対しては、まず、連絡帳にはどんな役割があり保護者はどんなことを書けばいいのかということを伝えてください。それでも、連絡帳に書く(=外国語を書く)ことは大きな負担です。ほとんど書かないからと言って、園の活動や子育てに無関心だというわけではありません。このような保護者の場合は、顔を合わせてコミュニケーションをとることがさらに大切になります。また、同じ事を繰り返し書いたり、意味がよくわからないことをだらだらと書いたりしている場合は、子どもに関する不安や心配が解消されていないサインかもしれません。保護者の話を聞く場を設けるなど、保護者の気持ちをくみ取るための働きかけをしてください。

保護者仲間

先生方以外に、気軽に子どものことを話したり、子育てについて相談したりできる保護者仲間がいると心強いものです。でも、外国出身で日本語に自信がない保護者は、なかなか自分から話しかけることができません。日本人の保護者も、自分から積極的に外国人に話しかけるという人はなかなかいないかもしれません。

そんなときは、先生が役員の保護者にあらかじめ外国出身の保護者のことを伝えておいたり、面倒見のよさそうなお母さんに声をかけておいたりすると、保護者仲間が作りやすくなります。たとえば、親子行事の準備で何かできそうな仕事や役割をふる、受け入れてくれそうなグループに入ってもらうなど、共通の体験ができるための配慮があるといいでしょう。